お金や資産の贈与には税金がかかります。
これを贈与税といい、以下のような税率になっています。



参考)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm
贈与税は「もらった人」が支払います。
1年の合計贈与金額からまず110万円を差し引き(基礎控除)、
残った金額に税率をかけて税額控除すれば算出できます。
特例贈与の例で考えると、
たとえば親から子へ、年間500万円贈与したとします。
500万円-110万円(基礎控除)=390万円
390万円×税率15%-10万円=48.5万円・・・贈与税額
もらった翌年の2/16~3/15までの間に、
子の方が、上記を申告して納税する、というわけです。
さて、上の例で「110万円の基礎控除」とある通り、
他人に贈与しても、年間110万円までは非課税です。
そのため、資産家は長い期間をかけて、
お子様や親戚縁者に毎年110万円ずつ贈与していきます。
たかだか110万円、とあなどることはできません。
子・孫合わせて10人に、10年間かけて贈与すれば、
110万円×10人×10年間=1.1億円
親の資産が3~6億円程度あり、相続税率が50%の場合、
これでざっくり6,000万円、相続税が節税できます。
裏返して言えば、
110万円基礎控除があるせいで、
国は6,000万円の税金を取り損ねるわけです。
そこで、少し前の話ですが、
令和3年度税制改正大綱(自民党・公明党版)が去年の12月に出されました。
その中の記述がこちら。


参考)https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/news/policy/200955_1.pdf
“資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築”
というのもよくわかりませんが、
要するに生前贈与による税金の取りっぱぐれを無くしたいわけです。
アメリカでは累積10年間の贈与合計額に対し課税するようで、
同じように「累積金額」で判断することにして、
1年間での基礎控除、という仕組みは無くしたいようです。
税理士の話によると、110万円基礎控除が無くなる話、
けっこう現実味があるようで、
某大手税理士法人の某代表は
”110万円控除はほぼ100%無くなる” と話しています。
この110万円基礎控除、長年使われているため、
不動産の持分を110万円分移し続ける人や、
何の知恵か「111万円を毎年贈与して、贈与税の申告を毎年行う人」もいたりします。
あるいは、低税率を活かして310万円贈与、510万円贈与、
という枠組みで生前贈与を行ったりと、最大限に活用されてきました。
ところで、贈与は”相続の前借り”という考え方をされているため、
贈与税の根拠法は”相続税法”です。
相続税法第21条の5には、今も以下のように記載されています。
贈与税については、課税価格から60万円を控除する。
実は、贈与税の基礎控除額は、平成12年まで”60万円”でした。
租税特別措置法で以下のように上書きされたまま、今に至ります。
措置法第70条2の4
平成13年1月1日以後に贈与により財産を取得した者に係る贈与税については、相続税法第21条の5の規定にかかわらず、課税価格から110万円を控除する。
110万円、というのは暫定措置だったわけですね。
ことほど左様に、税制とは国の事情によって変化するものです。
あと3ヶ月で令和4年度の税制大綱が出てくるでしょう。
そもそも日本は、相続税も贈与税も、
他国より最高税率が高く、かつ課税最低限度が低い為
低資産層からも徴収しやすい構造になっています。
これ以上増税されないことを願うばかりですね。。