今回は、不動産の市場価格と、道路の”良し悪し”の関係についてお話したいと思います。
以下、東松山市を例としてお話します。
東松山市は地方都市ですので、
市の隅から隅までキレイに区画整理されているわけではありません。
市の予算には限りがあります。
また地主から反対に遭って区画整理できないこともあります。
昔からの地主の方は、今までの土地に愛着がありますので、
区画整理して土地の形が変わってしまうのを嫌う場合があります。
それはそれで、ひとつの考え方だと思います。
そういった歴史から、東松山では綺麗に区割りされた地域と、
旧来からの雑然とした地域が混在しています。
区画整理が完了した地域(箭弓町3丁目、六反町・六軒町等の旧五領沼方面、最近なら美原町など)は、おおよそ住宅地の道路の広さ(幅員)が5.5m~6m以上です。
普通車2台がすれ違いできますね。
一方、幸町、松葉町、和泉町などの奥の方では細い道路が多く、車のすれ違いに苦労します。
道路幅員は2.8m~4mくらい。
また、こういった昔からの地域では私道が多いのも特徴です。
普段我々が通行する道路は「公道」です。
東松山市が所有して、東松山市が管理する道路です。
「私道」は私有地です。
他人のものなので、本来であれば勝手に通行することはできませんが、
所有者が許してくれているから通行できる道です。
私道は民間が所有する土地です。
そのため道路を舗装するのも管理するのも、民間が費用負担します。
たとえば下図のような突っ込み道路は、周りの戸建所有者が共有で持っていることが多いです。
このような場合、アスファルトの張替や補修、掃除なども、周りの皆で行うことになります。

※東京23区や横浜・川崎などでは私道でも、公で管理してくれる場所が多いです。
役所の予算規模の違いでしょうか・・・
さて、土地を買うときに、目の前の道路は「公道」がいいでしょうか?「私道」がいいでしょうか?
おそらく「公道」ですね。
残念ながら私道はトラブルになる可能性があり、第三者にとって手を出しにくいものです。
【 私道の負担 】
私道の管理・修繕
固定資産税の支払(公衆用道路でない場合)
私設埋設管(下水管など)の管理・修繕
相続時の名義変更
私道は、複数の所有者が共有で持ち合っていることが多いです。
所有者の数は、多いと20名以上になることもあります。
所有者が多いということは、そのぶんトラブルも多いものです。
よくある事例は、所有者が亡くなってしまい相続になった時に登記手続きを行わず、
所有者がわからなくなってしまうもの。
私道持分が、固定資産税上で免税点以下になると、納税通知書に記載されません。
気の利かない税理士や司法書士に相続手続きをお願いすると、
私道の相続登記を忘れてしまうことがあります。
相続した土地建物を転売した後には所有者不在の私道持分だけが残り、
「所有者不明私道」ができあがる、というわけです。
【 私道のリスク 】
共有私道の所有者不明問題
通行禁止や勝手な利用などの隣人トラブル
通行掘削同意が取れない場合の工事リスク・価値下落リスク
測量費用の増大(所有者多数のため)または確定測量が不可能になる恐れ
東松山市や比企方面でも、たまに「関係者以外通行禁止」と立札された私道がありますね。
都内ではもっと激しくて、
あからさまに「通り抜け禁止」の看板で道路の半分を封鎖してしまう人がいます。
これも立派な「隣人トラブル」です。

さて、上図のような道路があるとします。
道路は私道で、Aさんとは関係ない、地元の大地主が所有しています。
「土地は持っているが、目の前の道路は他人のもの」です。
このような状況で、Aさんは古くなった家を建て替えできるでしょうか?
あくまで目の前の道路は「私道」であって「他人の土地」です。
勝手に通行してよいのでしょうか?
応えはYESでありNOでもあります。
民法でも決まった条文はありません。
一応、判例では、私道(建築することを許された位置指定道路)について、
日常生活上の生活に不利益がある場合、
私道所有者の規制・妨害に対して、排除請求できるとされています。
要するに、私道を通行しないと公道に出られないような人は最低限の通行が可能とされます。
その拡大解釈として、建て替えに関わる工事車両の出入りも可能といわれています。
つまり、ふつうは建て替え可能とされますし、通行も許容されます。
しかし歩行は許されるが、自動車通行は許されるとは限りません。
土地の周辺状況によるのですが、
少なくとも、都内では自動車通行が当然に許されるとはされません。
実務上、私道の所有者から通行の同意をもらえない土地を売買することがあります。
その場合は自動車が通行できない前提となります。
売買契約書にも「通行権の付与された書面は取得していません」と記載します。
さて、通行権の有無について書きましたが、これも「判例」のお話でしかありません。
判例とは具体的な案件に対して裁判官が考えた筋道であって、
刑罰や道徳規範とは別の問題です。
訴えれば、権利が認められて勝てるかもしれませんが、
訴訟にならないと確定しない権利、とも言えます。
私道所有者には「私の土地で私の道だから、私のルールに従って欲しい」という感覚の方もいらっしゃるので、判例おかまいなしに妨害行為を行う恐れはあります。
不動産取引上、私道を含む宅地を取引する場合は、
私道の所有者から「通行掘削同意書」を取り付けます。
私道持分も含めて売買する時(あるいは安価な取引の場合)は
同意書を取り付けないこともありますが、通常は同意書が必要です。
前面道路が完全に他人の所有道路である場合は、同意書がほぼ必須になってきます。

※こういう文面のもの。これは複数所有者の場合の協定書です
土地の売買では、周辺のことを全く知らない人が土地を買うわけです。
第三者からしてみれば「通れるかわからない道路」は不安なのです。
工事業者も、同意書が無いのに工事するわけにもいきません。
特に下水道業者などは、同意書が無いと工事を請け負ってくれないことが多いです。
※このあたりは自治体によっても取り扱いが変わります。
郊外の方がゆるく、23区内は厳しいです
とはいえ、売買対象の宅地はあくまで個人所有ですから、
売りたい土地は、道路とは関係なく売買できます。
通行同意が無ければその分だけ土地の価格が安くなるという次第です。
以上、私道の細かい事情を説明してきました。
それでは、土地の売買価格に対して、道路はどの程度影響するでしょうか。
以下の記事に続きます・・・・