前回は、私道のリスクや負担について説明しました。
今回は具体的なお話。
土地の売買価格に対して、私道がどの程度影響するかを考えてみます。
地価のおおまかな基準として、国が年に1回「公示地価」を発表しています。
あの公示地価というものは、「標準地」としての価格を示したものです。
「標準地」とは文字通り、標準的な土地のことを指します。
とすると、普通に考えて「標準的な土地」は「公道」にくっついた宅地を指します。
残念ながら、私道は個別事情として減点要素になります。
以下のような類型を考えてみましょう。全て住宅地です。
Aを標準的な宅地として、価格を100とします。

Bはそれに対して道路が7mと少し広くなっています。
5mより価値は高いと考えられますから、102~105程度でしょうか。
Cはいわゆる旗竿地。敷地延長ともいいます。
旗竿の竿部分の広さにもよりますが、おおよそ80くらいと考えるのが通常です。
Dは私道(位置指定道路)の突き当たりです。
道路に対する間口も狭く、自動車は軽1台くらいが精いっぱい。
これは相当厳しくて、50くらいになると思われます。
江東区や江戸川区等の狭小地域で、自動車利用が想定されなければ、60くらいにはなりそう。
なお、この私道が砂利道になるとさらに厳しくて、おそらく40くらい。
ちなみにAは北側道路ですが、南向きだと110程度。北東角地or南西角地なら120~125。
以上は取引上での、私の感覚になります。
あくまで想定の例で、区内・都市近郊・郊外 と地域柄によっても変わります。
具体的な計算式はありません。
不動産鑑定士による鑑定評価では、
街路補正などを入れて考慮するようですが、この補正値にも統一的な基準はありません。
また、鑑定評価は公示地価に寄せるように作られます。
「実際いくらで買い手がいるのか」とは全く関係ありません。
財産評価基本通達という、土地評価の指針となるものが国税庁から出ています。
これは相続税のための評価通達で、
時価評価とは関係ないのですが、一定の参考にはなります。
この評価基準だと、
旗竿地は「不整形だから減額」という話になります。
共有持ち分の私道は、宅地の30%減だとか、特定路線価を付けるとか、
旗竿地評価で不整形補正するとか、細かい話が色々あります。
持ち分の無い私道に接している宅地は、相続税評価のうえでは「普通の土地と一緒」扱いです。
普通の不動産売買の話だと「道路持ち分無しの宅地」は販売しづらく価格低下要因です。
一方、相続税評価では「普通の土地と変わらない」というわけです。
不思議な感じがしますね。
時価評価と相続税評価は、けっこうズレがあります。
不服があれば鑑定評価してください、というスタンスですが、
鑑定評価も、時価をしっかり反映してくれないことが多いのが実情です。
地主の方で相続が発生した際、
税理士に財産一覧表を作ってもらうと思います。
そこに書いてある土地の評価額は「相続税評価額」ですが、
実際の取引価格とはズレがあります。
特に市街化調整区域の宅地見込地などは、もう全然まったく違うことがあります。
なので、税理士の言うままの金額を参考にして
遺産の分割協議を行うと、結果として不平等になり不満の元凶になることがあります。
不動産の「実際、いくらで売れるのか」は、素人判断だと見誤ることが多いです。
揉め事になってから時価評価をお願いされることが多いので、
できれば揉める前にご相談頂けると幸いです。
相続であれば生前のうちに、
離婚ならお二方一緒に(気まずいでしょうけど)、お願いいたします。